悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。


 こんな姿、誰にも見られたくない。もちろん美しくないからだし、バレてしまうから。私が大嘘をついていることがバレたら、使用人たちからも白い目で見られ、ルーカスにも愛想を尽かされるだろう。いや、それでルーカスに嫌われたら、しめたものかもしれないが。


「も、申し訳ございません。忘れ物が……」

 ジョエル様にそう言って、慌ててシャワールームに戻ろうとしたが……なぜかシャワールームには鍵がかかっている。そして、中からは男女の声が聞こえた。

 まさか、シャワールームの中でエッチなことをするわけじゃないよね!?



 パニックを起こしてシャワールームの扉をガチャガチャとするが、男女は開けてくれない。

 最悪だ。こうなったら帰るしかない!そう思った時だった。

「何している」

 こんな時に絶対に聞きたくない声が背後から聞こえた。

 きっと彼は私を見て、怒りに震えながら言うのだ。お前、女だったのかと。

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