悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。
「でっ、でも!想像以下でびっくりしたでしょう? 」
思わず言ってしまった。
それもそのはず、私は今や使用人の服に持ち主の分からないスカートを穿いている。カツラを被っていたため、髪も逆立ってボサボサだろう。この空間にいる令嬢に比べたら、哀れなほどに醜い。ここから消えたいと思うほどに。
それなのに、ルーカスは頬を緩めて告げる。
「綺麗だ」
……え!? ルーカスの目は、節穴ですか!?
「想像以上に綺麗で、俺は今戸惑っている」
どうしてそうなるの?
今の私を見てそんなことを言うのだから、ルーカスはからかっているのだろうか。それとも、馬鹿にしているのだろうか。だが、その真剣で甘い瞳は冗談を言っているようには見えなくて、私は真っ赤な顔で俯いた。
「さあ、セシリア。会えなかった八年分の話をしよう」
ルーカスは低く甘い声でそう告げ、私の肩を抱く。ルーカスなんて大っ嫌いなのに、こうやって優しくされて、不覚にもドキドキしてしまうのだった。