悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。


 こんな時なのに、私のお腹は大きな音を立てた。だから慌てて腹部を押さえる。私としたことが、はしたない。

 それなのにルーカスはそれを聞いて笑い、

「じゃあ、俺が取ってやろう」

立ち上がる。そしてルーカス自ら皿を持ち、料理の大皿の近くを歩いて回るのだ。

「セシリア、ローストビーフなんてどうだ? 」

 私が食べてもいいのだろうか。だが、あまりにもローストビーフが美味しそうで、我慢出来そうにない。

「一ついただける? 」

 すると、まるで召使いのようにルーカスはローストビーフを皿に取り分けた。

「サラダは? 嫌いなものはあるか? 」

「ううん、何でも食べられるわ。
 ……ルーカスはキノコが嫌いなのよね? 」

 そう聞くと、

「よく覚えているな」

彼は嬉しそうに笑う。

「キノコは嫌いだ。だが、セシリアが食べなさいって言うなら、鼻をつまんでも食べる」

 つまり、私の言いなりだということか。

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