悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。


 普段のルーカスが破茶滅茶で自己中すぎるから、今のルーカスに驚きを隠せない。そして、いつものルーカスが酷いから、今のルーカスにドキドキしてしまう。好きになんて、絶対にならないのに。

「わー!フルーツも美味しそうなものが山盛りね」

「これは珍しい南国のフルーツだ。

 ぜひセシリアに食べてもらいたい」

 ルーカスはそう言って山のように食事を取り、もとの席へと戻る。そんなルーカスと私を、人々は驚いたように見ていた。

 そして、席に座ったら食事……というわけにはいかないらしい。ルーカスはご丁寧にローストビーフを一口サイズに切ってくれる。

「あ、ありがとう」

 困惑する私に、丁寧に折りたたんで一口サイズに束ねたローストビーフを、フォークに刺して突き出す。もしかして、これを食べろと?

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