悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。

「……え? 」

 何の手紙?なんて聞くのは愚問だろう。もちろんルーカスは、あの求婚の手紙について言っているのだろう。

「……ええ」

 なんて答えながらも、なんて言い訳しようか必死に考えていた。

 今のルーカスは、まさしく理想の男だ。だが、私は彼の本性を知っている。それに、何と言っても身分差という障害もある。考えれば考えるほど、ルーカスと結婚してはいけないと思う。

「あのね、ルーカス……」

 私は静かに彼に告げる。どうすれば彼が納得してくれるのか、必死に考えながら。

「私……今は平民なの」

 ルーカスは私を見透かすような瞳で見る。

「本当は、こうやって話さえ出来ない身分なのよ」

 そう言いながら、我ながら辛く思った。

 私は家族との平民生活に満足していたし、伯爵令嬢に戻りたいとも思わなかった。だが、こんな時にひしひしと感じる。私たち一家は陥落したのだ。人々から指さされ、嘲笑われる立場に……

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