悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。
強引で甘い男
煌びやかな夜会に、煌びやかなルーカス。まるで私はシンデレラにでもなった気分だ。だが、魔法がいつか解けてしまうことは知っている。ルーカスもいつかは私に興味がなくなるだろうし、平民という立場は魔法でも変えられない。
「ご、ごめんね、ルーカス……」
結婚出来ない、なんて言葉を、彼は華麗に遮った。
「一緒に踊ってくれないか? 」
いや、この綺麗な令嬢だらけの間で踊るなんて、狂気の沙汰だろう。
ダンスだって、学院を去ってから公の場では踊っていない。騎士であるお兄様の練習相手にはなっているのだが。もし、ルーカスのダンスの腕が一番なのだとしたら、私はただの見せ物だろう。
「ご、ごめん……ダンスは……」
無理と言おうとした私の腕を、ルーカスはぎゅっと引く。そして倒れそうになった私を、ルーカスはそっと支えてくれる。手を合わせ体が密着する形となり、胸が熱くドキドキという。
やめてもらおうとルーカスを見上げるが、至近距離でその碧眼と視線がぶつかり、かあっと顔に血が上る。