悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。
「ルーカス……だめ……」
苦し紛れに吐く私に、そっと身を寄せるルーカス。
「何が駄目だ? 」
低く甘い声に、身も心も溶かされそうになる。
「だめ……なんだか、ドキドキする。
……ルーカスなのに」
「それならもっとドキドキしてくれ」
「だめよ……やめて、ルーカス……」
皆がいるというのに、皆が見ているというのに、ルーカスはふらふらする私を支えて踊りながら、そっと額にキスをする。ルーカスの唇が触れたとこほが、焼けるように熱い。
平民のシャツとスカート姿で踊る私と、正装姿のルーカス。そんなちぐはぐな私たちを見て苦笑いする人もいれば、敵意を込めて私を睨む人もいる。
令嬢に敵視されることは避けたかった。だが、ルーカスに絆されている今、私の思考能力は完全に停止していた。ただひたすらドキドキと胸を高鳴らせている。
……ルーカスなのに。
ルーカスなんて、嫌いなのに。