悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。

「お兄様!」

 助けてください!と目で訴える。

 お兄様は私とルーカスを、驚いたように交互に見た。そんなお兄様に、ルーカスは聞く。

「マルコス、どこに行っていたんだ? 」

「ご令嬢と、シャワールームで致しておりまして」

 お兄様は爽やかな笑顔で答える。

 まさか、シャワールームから私を締め出したのは、お兄様だったの!? そして、お兄様は清純派だと思っていたのに、騎士になって汚れてしまったの!? なんだか酷くショックだ。

 そんなお兄様の横には頬を染めた令嬢がいて、お兄様の腕をぎゅっと握っている。まさしく大人の世界だ。私はついていけない……

「いいなぁ、お前は」

 ルーカスは遠い目でお兄様を見る。そして、考えたくもないが……考えても私には関係ないが、ルーカスも令嬢を抱いたことはあるのだろうか。考えるだけで胸が痛くなる。……いや、私には関係ないのだが。

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