悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。

「セシリアを呼んでくれたのは、マルコスだろ? 」

 私がセリオだと疑ってもいないルーカスは、そんなことを言う。そして調子のいいお兄様が、

「仰せの通りです」

笑顔で答える。そのままお兄様は、ジョエル様に告げたのだ。

「ジョエル様、私たちは向こうでワインでも飲みに行きませんか? 」


 えっ、ちょっと待って。

 お兄様はまた、ルーカスと私を二人きりにするのだろうか。お兄様って、私の味方ではなかったの!?


 ジョエル様は笑顔で頷く。そして、令嬢たちを連れて、お兄様と向こうへ行ってしまったのだ。こうして私は、またルーカスと二人きりになってしまった。


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