悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。


 もちろん、この庭園を知っている。だが、いつも忙しくしていて、庭園を横目に通り過ぎるだけだ。加えて、夜の庭園はライトアップされており、暗い中照らされた花々が幻想的に浮かび上がっている。満開でないとはいえ、とても綺麗だ。思わず見惚れてしまうほど……



「どうだ?綺麗だろ? 」

 ルーカスは私の肩を抱いたまま、甘く優しい声で告げる。いつもの声とは全然違うその声を聞き、また胸がきゅんと鳴ってしまったのは言うまでもない。

「俺は、この庭園をセシリアと見ることが出来て嬉しい。

 ……もし良かったら、花祭りにも来て欲しい」



 ルーカスが、花祭りの準備に汗を流しているのは、私を呼ぶためだと知っている。それを知っているからこそ、花祭りの話題を出されるのがキツい。私のために花祭りを成功させようとしているルーカスに、さらに惚れてしまいそうだ。

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