悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。


 ルーカスは静かに話しながら、そっと私の髪に触れる。ルーカスの触れた部分が、ちりちりと熱を持つ。

「お前は知らないと思うけど、俺はずっとお前が好きだった」

 知っている。セリオの時に、ルーカスに聞いたから。

 だが、改めてこうやって言われると胸がきゅんとする。何しろ、セリオとセシリアに対する、ルーカスの態度が違いすぎる。

「子供の頃は、恥ずかしくて好きだと言えなかった。バレないように必死だった。

 でも、お前は急に俺の前からいなくなった」

 ルーカスは悲しそうに私を見る。暴君ルーカスが、こんなにも切なげで泣いてしまいそうな顔をするなんて。そのギャップにもくらくらする。

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