悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。


「俺はお前がいなくなってから後悔した。お前は新たな地で恋に落ち、新たな男と結婚するのだろうと思って。
 
 ……でも、俺は諦められなかった。

 どんな女を見ても、無意識のうちにセシリアと比べてしまう。お前しか俺にはいないと分かった」

 ルーカスは手に取った私の髪に、そっと唇を落とす。そして甘く優しい声で、そっと話す。

 そういうの、やめて欲しい。いつもとは違うルーカスの様子に、不覚にもドキドキしてしまう。

「そんな時、俺はマルコスが国の騎士団に応募しているという話を聞いた。

 俺は国の騎士団から、マルコスを引き抜いた。それで俺は、マルコスにお前の様子をたくさん聞いた」


 ルーカスに引き抜かれたという話は、お兄様から聞いた。だがお兄様は、私の味方……だと思う。私の味方ではなかったら、変装して屋敷に潜入したら? なんて馬鹿げた提案はしないだろう。屋敷に潜入したからこそ、ルーカスには別の姿があることが分かった。暴君という、今の紳士な態度からは想像出来ないほどの姿が。

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