悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。

「お……お兄様は何て? 」

 思わず聞くと、ルーカスは暗闇の中、儚げな笑顔で笑う。

「セシリアは恋人おらず、森の外れで寂しい生活をしていると。

 それは俺にとって、大チャンスだと思った」

 だから求婚の手紙を送ってきたのか。

 ルーカスのその気持ちは嬉しいが、ルーカスとの結婚には障害が大きすぎる。私と結婚することによって、ルーカスも多大な影響を受けてしまう。それに、今はこんなに甘やかしてくれるが、明日セリオになった瞬間に、この甘い気持ちは吹っ飛ぶのだろう。

「ごめん、ルーカス。……ルーカスの気持ちは嬉しいんだけど……」

 だけど、結婚は出来ない。そう言おうとした。だが、私の言葉をルーカスは遮る。

「嬉しいなら、どうして結婚したくないんだ!?

 俺は、お前を手に入れるなら、何でも捨てる覚悟はある。それくらい、お前しか見えていない!」

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