悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。


 ルーカスの素直な言葉が、ぐいぐい胸を抉る。そして、ルーカスから目が離せなくなる。

 ルーカスのその綺麗な目鼻立ちに見惚れてしまうだけでなく、その必死で優しげな声だとか、甘い瞳だとか、全てに狂わされっぱなしだ。

 これ以上ルーカスといたら、身が持たない……



「セシリア……」

 低く甘い声で名前が呼ばれる。そして髪に触れていた手は、いつの間にか私の両肩を優しく、だがしっかりと掴んでいる。

「好きだ、セシリア……」

 その澄んだ瞳から、目が離せなくなる。

「俺と結婚してくれ」

 すがるように切ない声で告げ、ルーカスはそっと唇を重ねる。私の気持ちだって伝えていないのに。結婚出来ないと言おうとしたのに。

< 97 / 267 >

この作品をシェア

pagetop