悪役令息とは結婚したくないので、男装して恋愛工作に励みます。



 一瞬、何が起こったのか分からなかった。ただ、頭がぼーっと真っ白になる。そして、キスされていたと思った時には、キスは深いものへと変わっていた。


 ちょっと待って!
 息が出来ないし、いきなりそんなこと……!!



 私の意識が飛ぶ寸前、ルーカスはようやく唇を離した。熱い吐息が漏れ、ルーカスは熱っぽい瞳で私を見る。まるで獲物を狙う猛獣のようなその瞳に、私の心は危険信号を発している。

 私は肩で息をして、唇を手で覆った。

「初めてだったのに……」

 その声は震えている。

「初めてなのに、あんなキス……ひどい……」

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