凄腕な年下外科医の容赦ない溺愛に双子ママは抗えない【極上スパダリ兄弟シリーズ】

　三十歳を過ぎると、同級生の友達はほとんど結婚してしまった。福井に住んでいる母も、『こっちに戻ってそろそろ結婚したら？』と電話してくるたびに言ってくる。私が高校三年の時に父は交通事故で亡くなってしまったし、姉は地元で結婚して子供もいるから、私がまだひとり身だというのが心配で仕方がないのだろう。
　でも、実家に戻ったからといって理想の男性と出会える保証はなく、今のようなやり甲斐のある仕事があるわけでもない。それになにより、もう好きになった人に裏切られるのが怖いのだ。
　多分私は一生独身のままに違いない。誰にも愛されず、ひとり寂しく死んでいく未来が自分には見える。
「ありがとう。気長に待ってみるわ」
　胸がチクッとするのを感じながらも、笑顔を作って花嫁に言葉を返す。
　その後、同じホテル内にあるバーでの二次会に参加した。
　　二時間ほどでお開きになったけど、部屋にそのまま戻るのがなんとなく嫌で、ひとり窓際の席でカクテルを口に運んでいた。
　目の前にあるのは、星屑をちりばめたかのような美しい神戸の夜景。
　冬で空気が澄んでいるせいか、遠くの方まで見える気がした。
　綺麗と思うと同時に、なんだか虚しくなる。
「ウエディングドレス姿……素敵だったな」
　親友が羨ましかったせいか、思考がそのまま声になった。
　大好きな人たちが結婚して幸せになるのは嬉しい。でも、恋人もいない自分だけが取り残されていくような気がする。
　三十歳くらいまではクリスマスを一緒に過ごしてくれる友人が何人かいたけど、今は誰もいない。だから、去年のクリスマスはコンビニのケーキとファーストフード店のチキンを自分のマンションでひとり寂しく食べて過ごした。
　もう十二月初旬。一年で一番嫌なその恋人イベントがもうすぐやってくる。
　私だけを愛してくれる男の人なんて、この世にはいないんだろうな。
　彼氏に浮気された経験から結婚のことは考えず、仕事に身を捧げてきた。
　男なんていなくても生きていけるとずっと自分に言い聞かせていたのに、今日みたいな夜は人恋しくなる。
　ひとりでいる方が自由で楽しい。彼氏がいたって浮気されるだけ。
　その言葉を呪文のように何度唱えただろう。