凄腕な年下外科医の容赦ない溺愛に双子ママは抗えない【極上スパダリ兄弟シリーズ】
 彼の義姉というのは、私の後輩で専務秘書の綾小路真理ちゃんのことだろう。
 とってもいい子で、私は彼女のことを妹のようにかわいがっている。その真理ちゃんが結婚したのが副社長で、今目の前にいる彼が彼女の義弟というわけだ。
 副社長は私よりも二歳年下なのに有能で、人望もあって、誰もが認める経営者。副社長に就任して短期間でたくさんのプロジェクトを進めているその手腕はすごいし、部下の士気を高める人格も人並み外れたものだと思う。
 それになにより、誰よりも精力的に仕事をしている姿に尊敬の念を覚える。彼のファンの女性社員ほどではないが、ちょっと憧れてもいた。
 社員の前では紳士的で優しい副社長だけど、その妻である真理ちゃんの話によると、副社長は少し意地悪な性格のようだ。それは副社長が愛している人にだけ見せる特別な顔なのだろう。
 私が副社長に憧れたのも、私のバイブルといっていい漫画のヒーローに似ていたからだと思う。副社長は現実離れをしたルックスで男臭さも感じさせず、ある意味、私の幻想を壊さない男性だった。でも、幻想は幻想。リアルな世界にそんな完璧な人はいないのだ。
 ただの憧れだったとわかっていても、副社長とそっくりの弟さんが目の前にいると、なんだか緊張してしまう。アルコールのせいもあるかもしれない。
「今日は結婚式ですか?」
 涼さんが穏やかな目でそんな質問をしてきて、小さく頷いた。
「ええ。綾小路さんはお仕事かなにかですか?」
 ためらいながら彼を名字で呼ぶと、優しい笑顔で訂正された。
「涼でいいですよ。綾小路って薫さんの周りにたくさんいるでしょう? ちょっと学会があったんです」
「学会ですか。発表とかあるといろいろと準備もあるんでしょう? 大変ですね」
「まあ、仕事ですから。……ところで、もうひとりでは飲まない方がいいですよ。悪い男はいっぱいいます。僕を含めてね」
 悪戯っぽく笑いながらそんな忠告してくる彼に、真剣に返した。
「涼さんは悪い男じゃないですよ。だって助けてくれたじゃないですか?」
 医者というのもあるかもしれないけれど、こうしてそばにいてくれて動揺している私を落ち着かせようとしている。
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