イケメン御曹司は初恋の婚約者と政略結婚で結ばれる

プロローグ

「――俺たちは籍を入れた。けれど君からの、妻としての見返りは求めてない」

彼が用意してくれたマンションは、マンションとは思えないくらいとても広い。洋風に綺麗に統一された家具はとても綺麗。高いだろうなぁ……。

「このマンションが私たちの新居だ。新居と言っても、忙しい時は仕事場の近くに借りてあるマンションに帰る。料理や洗濯、掃除をしてくれる人を呼ぶつもりだから、君は特に何もしなくていい。何か買い物をする時は、このカードを使ってくれ。あとは……あぁ君の部屋はそこだ。最低限の家具は揃えておいた。君の好みが分からなかったから、適当に揃えてしまった。気に入らなかったら、買い替えてくれ。何か質問はあるか？」

私は夫となった人の勢いについていけず、放心状態だった。いくら婚約している頃から冷たかったとはいえ、新婚早々別居生活すると言われるとは、思ってもいなかった。

「……い、おい。聞いているか？」
「すみません聞いてます。色々とわかりました。1つお願いがあるのですが、いいですか？」ボーッと考え込んでいた私は慌てて答えた。
彼はピクリと眉を動かし「あぁ」と短く答えた。