彼は意地悪なボイスアクター〜独占欲の強い彼に溺愛され狂いそうです〜
(マジか、やりやがった。この女)


俺は目の前で起きていることに一瞬、驚いたが及川の顔を見ると笑えてきた。

こんなオブジェあったっけ?って思えるほど面白い形で固まっている。

俺は笑いが止まらなくなった。


(やばい。今、笑ってはいけない)


人間、笑いを我慢すると余計に笑えてくる。

思わず、吹き出してしまう。

その瞬間、何とも言えない軽蔑するような眼差しで女に睨まれた。

身体が気持ちの良いほどゾクッとした。

(これ以上、笑ったらこの女はどんな行動に出るかな。矛先が俺に向くかも)

そんなことを思い、試してみたくなった。

ここからは完全に演技。

わざと肩を震わせてみる。

しかし女は顔を真っ赤にして逃げ去っていった。

(なんだ。つまらない)

女が居なくなると、今度は及川の妻と思われる女性が及川に掴みかかった。

俺は巻き込まれたくなくて、外に出た。

すると盛大にあの女が転倒するところが目に入った。

周りは誰も助け起こさない。

彼女が食事をしていただろう場所には仲間たちがいるのに、かけよりもしない。

(本当に女って生き物は気味が悪い。先程まで一緒に食事を取っていたのではないのか)

実際に見てはいないので、わからないが食堂の一角だけがやけに水浸しになっていて、椅子も倒れている。

先程までそこで繰り広げられていたことは簡単に想像が出来た。

そんなことを思っていると女は立ち上がり、階段の方へ逃げていった。

しばらく見ていると、仲間達とおぼしき女達が何やらニヤニヤと話している。

すると女が向かった先へ行くではないか。

「こいつら……」
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