彼は意地悪なボイスアクター〜独占欲の強い彼に溺愛され狂いそうです〜
俺はその場から立ち去ろうと思った時だ。

女達がトイレから出てきた。

俺を見て少しハッとした表情を見せた。

今の会話を聞かれたと思ったのだろう。

会釈して俺の前を通ろうとする。


「お前ら、くだらねぇな~」

「え?」


気がつくと、止まらなかった。

自分は何様だよって思うが言わないと気がすまなかった。

怪訝そうに俺を睨み付ける女たち。

「なんですか?」

「私たちに言ってんの?」

「こんな薄暗ぇとこにわざわざ来て、人の悪口とかダサすぎだろ」


俺は女子トイレを親指で指さした。


「あの女がいるの知ってて、わざわざ来たんだろ?きちがいかよ」

女達の顔が一気に怒りと恥じらいで真っ赤になるのがわかった。

「は!?あ、あの女がいるなんてし、しらないわよ」

(やっぱり知ってて来たな)

「ははっ」

「何、わからってんのよ」

「いや〜すまん。あの女って誰か、わかってんじゃねーかよ」


「もう、行こ」

「あんた、変な言いがかりつけないでよね!」

「デタラメな噂話とか流したら、訴えてやるから!」

「こんな暗いところでサングラスとか不審者だよ」

「それはご指摘どーも」

ふんっとあからさまに顔を背けて、女たちは去って行った。

トイレでは微かに啜り泣く声が聞こえた。

「あんな男に騙されるのもどうかと思うぞ」

俺はぽつりとそんな言葉を吐き捨て、その場を後にした。
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