彼は意地悪なボイスアクター〜独占欲の強い彼に溺愛され狂いそうです〜
「ありがとう。助かったよ」

私はディレクターにUSBを渡してエレベーターに戻った。

スタジオは誰かに会う確率が高い。

そそくさと3階に戻ろう。

7年も経っているのに自分が情けなくなる。

辞めてもよかったのだが、ずっとこのテレビ局に入りたかった。

頑張ったのに辞めるのはなんだか悔しかった。

私は少し気分が落ち込んだのでリーガル様を握ろうとポケットに手を突っ込んだ。

「あれ?」

ない……リーガル様がいない。

もしかして落としたのかもしれない。

私は再びスタジオの前まで自分がたどってきた道を探しながら戻った。

「ない」

大切にしていたものなので、ショックだった。

保存用にもう1つ持ってはいるが、落とすなんてことを初めてしたので、かなり凹んだ。

もう1度同じ道を探そうかと思ったが、ここに長くは居たくない。

私は諦めてタイミングよく来たエレベーターに乗った。

誰かが降りて来たが顔を上げず、ささっと乗りこむ。

扉が閉まる寸前、誰かが乗ろうとしたので慌てて開くボタンを押した。
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