彼は意地悪なボイスアクター〜独占欲の強い彼に溺愛され狂いそうです〜

エレベータ―

その人は入ってきたがボタンを押さない。

なんで押さないのだろう。

私は3階なので、このままでは3階でまた上に上がってしまう可能性がある。

「何階ですか?」

「ああ、1階を押して頂けますか?」

私はその声に驚いて勢いよく振り返ってしまった。

「……何?」

後ろの壁に寄りかかった男性が私を見た。

綺麗な顔……慌てて前を向いた。

「いえ、1階ですね」

私は急いで1階のボタンを押した。

「ありがとう」

低いような高いような、とにかくよく通る心地よい声でお礼を言われた。

「…いえ」

心臓がバクバクした。

この声……

すぐにわかった。

彼の声はまさに……リーガル様!!!

私の大好きでやまない声。

この世で1番愛している人。

どうしよう!今すぐ麗依に電話したい。

でも、待って。リーガル様がこんなところにいるのだろうか。

私、とうとう頭が可笑しくなって幻聴が聞こえているのかも。

「俺の声に聞き覚えがあるの?」

「え?」


突然、後ろから声をかけられて、心臓がさらにバクバクと音をたてた。

「そう……なんか驚いていた気がしたから」


そうよ、この腰に響く声はまさに。

でも顔出しNGにしていると言うことは知られたくないはずだ。

「いいえ、ちょっと知り合いに似ているかなと思って」

「ふーん」

なんだか、試されているような声色で少し怖かった。

すると急に真後ろに近づいてくる気配があった。

小声だがよく響く声で耳元で言われる。


「……たぶん君が想像している人であってるよ」


少し楽しそうな声でそう言われ私は完全に硬直した。

エレベーターが3階に着く。


「着いたよ、降りないの?俺としてはこのまま一緒に乗ってても構わないけど」


私は我に返りエレベーターを降りた。

そして後ろを振り返る。

その男性はこちらを見て片方の口角をあげてニヤリと笑っている。

「残念だなぁ」

私が男性から目を離せないでいると扉が閉まってしまった。
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