彼は意地悪なボイスアクター〜独占欲の強い彼に溺愛され狂いそうです〜
廊下をウロウロしている女を俺はしばらくの間、見ていた。

この女、いったい何処で見たんだろうか。

「ん?」

ばーっと7年前の記憶が蘇り、ようやく気が付いた。

不倫プロデューサーの相手の女だ。

まだこの会社にいたのか、すごいな。

俺だったら、あんなことされて、こんなところに居たくない。

きっと逃げてしまうだろう。

「すごいな」

俺は一気にこの女に興味を持った。

気が付いたら後を追ってエレベーターまで一緒に乗り込んでいた。

話しかけてみようか。

俺は後ろの壁に寄りかかり彼女を見つめた。

すると突然、声をかけられた。

「何階ですか?」

うっかり降りる階のボタンを押すのを忘れていた。

急に声をかけられ少し動揺した。

「ああ……1階を押して頂けますか?」

俺がそう伝えると彼女は驚いた様子で勢いよく振り返った。

なんで、そんな驚いた顔をするんだ。

「何?」

思わず冷たい声が出てしまった。
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