彼は意地悪なボイスアクター〜独占欲の強い彼に溺愛され狂いそうです〜
「何?」

私は気まずくて下を向く。

同期の3人だった。

7年前、一緒にいた3人だ。


「今日の同期会って何人来るの?」

「もう辞めた子も多いから少ないと思うよ」

同期会なんてあるんだ。

そんなこと初めて知った。

当然だけど、私は誘われていない。

どうしよう。

このままでは私がここに居るのがバレてしまう。

もし私に気がついたら、きっとその同期会やらで話をネタになってしまう。

逃げよう。

私がそう思った時だった。

私の手を彼が取った。

「え」

「こっち」

私たちが揉めていると見知った顔の3人が現れた。

「あ」


そして、そのまま自分の車の後部座席に乗せた。

「隠れて」

私は見えないようにうずくまる。

ドアが閉まった。

「あれ?那原さんじゃないですか」

「どうも」

「だいぶ前に帰ったと思ったのに」

「ちょっと一服してた」

「そうなんですね~じゃあ、また」

「はーい」

「誰!?」

「え~言えない」

「なにそれ!」

声が遠のいていくのが聞こえた。

知り合いなんだ……。



どうやら那原さんは私の同期の1人と顔見知りのようだった。

なんだろう。胸がチクチクする。

車のドアが開く。

「もう大丈夫だよ」

情けない。こんな格好で。

「ありがとうございます」

「事情は知らないけど助けたんだから付き合ってよ」
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