彼は意地悪なボイスアクター〜独占欲の強い彼に溺愛され狂いそうです〜
しかし私にそんな度胸はなく・・・それに少しだけ話をしたかった。

だってリーガル様の中の人。

あんなに優しい声でささやく人だ。

いい人だろうと信じたい。

私は自分がずるいと思った。

ただのファン心理である。

ずるくてなんだか惨めだと思った。

「はい」

「わっ!」

急に顔に温かいものを押しつけられてビックリした。

「お腹すいてるんでしょ」

ファーストフードの袋を差し出される。

「これを買いに?」

「俺もお腹空いてたし」

「それに、そんなに腹の虫がうるさかったら近所迷惑でしょ」

そう言って隣のカップルを顎でしゃくる。

ついカップルを見ると驚くほど濃厚なキスをしていた。

(ひぃっ!)

私は見てはいけないと思い、すぐに目線を戻す。

「何そんなうぶなふりして」

いちいち腹の立つ男だ。

やはり期待はしない。

リーガル様とは似ても似つかない。

「この匂いも近所迷惑ですよね!」

「は?文句言うなら食うな」

取り上げられそうになった袋を庇うと笑われた。

この人、笑うと本当にかっこいい。

「なんだよ、そんなに見るなよ」

しかし無邪気な笑顔から一転。

すぐに意味深な笑顔になる。
< 33 / 50 >

この作品をシェア

pagetop