彼は意地悪なボイスアクター〜独占欲の強い彼に溺愛され狂いそうです〜
私は黙って食事を取った。
途中ちらっと見ると那原さんはハンバーガーを片手で頬張っていた。
この人、かっこいいよな。
「ん?」
「何でもないです」
目線を反らすとぐっと寄ってきた。
「な、なんですか?」
「そばに寄って欲しいのかと思って」
そう言うと那原さんは背中に手を回した。
触れることはしなかったが、ベンチの縁に腕を置いているのはわかる。
なんだか背中がじんわり温かくなったような気がしてドキドキしてしまう。
もう食事が喉を通らなかった。
「残すの?」
「なんかお腹いっぱいで」
「じゃあ、ちょうだい」
そう言うと私の食べかけを普通に食べた。
「え?」
「何?」
「いえ、何も」
なんだか、普通に対応されて意識しているこっちがバカに見える。
「それで話ってなんですか?」
「話?そんなこといったっけ?」
「え?じゃあ、何のために私が仕事が終わるの待とうとしていたんですか?」
「ああ、俺、興味がある人って観察したくなるんだよね」
そう言って私の顔を覗き込んだ。
「やめてください。用がないなら帰ります!」
私が立ち上がると那原さんは腕を掴んだ。
「待ってよ、せっかくなんだから夜景を楽しもうよ」