彼は意地悪なボイスアクター〜独占欲の強い彼に溺愛され狂いそうです〜
私はどうやら、この声に弱いらしい。

静かに元の場所に腰掛けた。

「良い子だ」

私は驚いて振り返った。

「あ、すぐにわかるってやっぱりオタク?」

このセリフはリーガル様がよく言ってくれるセリフだ。

「今、寄せてきましたよね」

「喜ぶかなって」

「バカにしないでください。あなたはリーガル様じゃありません!プライベートでそういうの乱発するのよくないと思いますよ」

「初めてやったし」

「ウソだ」

「本当だよ。だって俺の正体みんな知らないもん」

「なんで私には正体ばらしちゃったんですか?」

「うーん。まあ、身元がハッキリしてるしね。テレビ局の人だし」

なんだか、腑に落ちないが、それ以上、聞くのは止めた。

「ところでさ、なんでテレビ局に勤めてるの?」

「なんで、そんなことにあなたに言わないといけないんですか」

「いいじゃん。聞きたいんだもん」

「中学生の時に見た番組のコーナーが好きで、私もこんなの作りたいって思ったからですよ」

「へぇ~どんな番組?」

「夜の情報番組で毎回、15分くらいのドキュメンタリーを放送してたんです。感動した話とかキュンとした話とか色々。たまに不倫・・・ちょっと大人なトラブルものもあったし、心霊現象とかもあったかな。それが楽しみでその番組を見ていました」

「今もやってるの?」

「もう終わっちゃいましたよ。でも何かを欠かさず見る番組ってそれだけだったから。なんだか、私の中で特別で」

「それで仕事にできるってすごいね」

「ハマるモノを自分でも作って見たかったんですよね」

「ふーん」

私はなんだか懐かしく語ってしまったことが急に恥ずかしくなった。

「那原さんはなんで声優に?」

「・・・自分じゃない誰かになれると思ったから・・・かな」

私は空気がなんだか変わったように感じて那原さんから目が離せなかった。

那原さんもまた黙って私を見つめた。
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