彼は意地悪なボイスアクター〜独占欲の強い彼に溺愛され狂いそうです〜
「あの……」

すると那原さんは鼻で笑った。

「何、マジな顔してんの」

「え?」

なんなんだ、この人。

今度はニヤニヤと人を試すような顔をする。

「なんかデジャヴ」

「何?」

「いえ、昔こんな気持ちになった気がして」


すると那原さんは私をジーッと見つめた。

何故か目が離せない。

「那原さ……ん」

那原さんは私から目を離しさっと立ち上がった。

「じゃあ、帰ろっか。送ってくよ」

そう言うと那原さんはスタスタと車へ向かってしまった。

ビックリした。

あんな吸い込まれそうな目で見つめられたらドキドキしてしまう。

それにしても、なんだか意味深な言い方だったな。

背の高い彼の大きな背中を見ながら私は早くなっている鼓動を抑えるのに必死だった。

車に乗ろうとしたとき、

「おい」

「え?」

「なんで後部座席なんだよ」

私が後部座席のドアを開けようとしたとき那原さんは助手席のドアを開けて待っていた。

「助手席だろ」

そう言って私の腕を取り引っ張った。

私はその勢いで那原さんの胸の中に抱きかかえられるようなかたちになってしまう。

「ちょっと!」

私は慌てて離れた。

「ごめん、ごめん。勢いをつけすぎた。さあ、どうぞ」

私は心臓が壊れそうなくらいドキドキして、目が回りそうになりながら座る。

「閉めるよ」

「はい」

バタンとドアが閉まり、那原さんは運転席に乗り込んだ。

「住所教えて」

「はい」

私が住所を伝えるとカーナビで、それを入力する。
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