彼は意地悪なボイスアクター〜独占欲の強い彼に溺愛され狂いそうです〜
しばらくすると、那原さんは静かな寝息を立てて寝始めた。

その間もずっと私の手を握っていた。

「これじゃ、心配で帰れないよ……」

私は那原さんの顔を見つめた。
あんなに意地悪な顔しか私に見せなかったくせに今は無防備な顔して眠っている。
見つめているうちに私も眠くなってしまった。

次に気が付いた時には何故か私はベッドに寝ていた。

「あれ? ここは?」

記憶が混濁してわからない。
見慣れない部屋を見渡して、ぼーっとする頭で考える。
すると、部屋の外から物音がしてビクッとした。

(そうだ!私、那原さんの家で)

私は急いで寝室を出た。

「あ、おはよう」

キッチンでは那原さんがポットに水を淹れている。


「おおおおお、お、おはようございます」

動揺しすぎて口がまわらない。

「コーヒー飲む?」

「はい」

私はボサボサの頭を手櫛でとかす。

「そこ座って」

顎でしゃくった先は昨日、那原さんが寝ていた場所だ。
近くにタオルケットがあるので、おそらく那原さんはここで寝たのだろう。
私はそっとソファに座った。

「あの、私、昨日……」

「あれ? 覚えてない?」

那原さんが私を見つめると意地悪な顔をした。

「あんなに激しかったのに?」
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