彼は意地悪なボイスアクター〜独占欲の強い彼に溺愛され狂いそうです〜

胸のザワザワ

みんな帰ってしまい、部屋に1人になった。

今日こそは残業しないと間に合わない。
なのに眠すぎて頭がぼーっとする。

眠気覚ましのドリンクを購入してから、もう一踏ん張りしよう。

そう決めて、自販機で一番強力な眠気覚ましのドリンクを購入した。

一気に飲み干して窓際に近寄る。

真っ暗な夜にキラキラと光る東京のネオン。

背伸びをして深呼吸した時に見知った顔が窓に写った。


「ねぇ」

同時に急に声をかけられ、心臓が止まるかと思った。
振り返るとそこには、同期の2人、与田さんと城田さんとが立っていた。
胸がざわざわする。
私は黙ったまま何も言えず2人を見つめた。
沈黙を破ったのは与田さんだった。


「永野さんって、那原さんとどういう関係なの?」


質問されている意味がわからなかった。
どういう関係と言われても最近、知り合ったばかりだ。


「なんで?」

「朝、見たのよ。那原さんの車から出てきたでしょ」



キーンっと耳鳴りがした。
離れて降りたのに、まさか見られているとは思わなかった。
何と言えばいいのだろう。
私は頭が真っ白になった。


「那原さんが何者かは知ってるの?」

「何者かって?」

「今、私、仕事で那原さんと関わっているの。あんたみたいなのがチョロチョロされると困るのよ」


だんだんと腹が立ってきた。
正直、私が那原さんの車に乗ってようが乗らまいが、この人たちには関係ない。
私はなぜ、今責められているのかわからなかった。


「黙ってないで答えなさいよ」

「いったい何を答えればいいわけ?」

「は?」

「私、別にチョロチョロしてないし。それに、あなたたちに関係ある? あ、もしかして彼氏とか?」


すると与田さんの顔がみるみるうちに赤黒くなった。
怒りで血が一気に登ったのだろう。


「あんた、ほんと生意気」


そう言って彼女は私に向かってきた。
私は咄嗟に身構える。
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