彼は意地悪なボイスアクター〜独占欲の強い彼に溺愛され狂いそうです〜

「あれ~?与田さん?」

「え?あ」

「どうしたの?」

「那原さんこそ、どうして?今日は収録ないはず」

「あ~実は別の番組の打ち合わせで」


那原さんは与田さんの髪に触った。


「ゴミ、ついてる」


与田さんの顔がみるみる真っ赤になっていく。
那原さんが不思議そうに首をかしげて与田さんを見た。


「どうしたの? 顔、赤いよ」

「あ、その」

「あれ?何さんだっけ?今朝はどうも」

「那原さん、永野さんとお知り合いなんですか?」

「ああ、今朝、道案内を頼んでね」

「道案内?」

「実は今日、ここに来る前に寄る場所があったんだけど。わからなくて」

「でも、車から出てきたような」

「だって乗ってもらって案内してもらった方が早そうだったし。てか、見てたの?」

「あ、それは」


私はなんだか、アホらしくなった。


「あの、私もう仕事があるんで良いですか?」

「ごめんなさい。私、なんか勘違いしていたみたい」


急に大人しく話し方まで変わった与田さんに鳥肌がたった。
私は部屋に向かった。
< 49 / 50 >

この作品をシェア

pagetop