『Special Edition③』
白杜は緊張した面持ちで【①診察室】と書かれたドアを開け、茜を診察室へと促す。
「こんにちは、どうぞお掛け下さい」
「失礼します」
医師に促され、丸いスツールに二人して腰を下ろす。
黒く長い髪をバナナクリップで纏め上げている女医、このクリニックの院長でもある長田 由美子医師。
40代後半といった雰囲気で、柔和な表情が印象的。
長田医師はパソコンの画面から手元の用紙に視線を落とし、その用紙をすぐ隣りにいる看護師に手渡した。
「緊張しますよね」
優しい声音で話す長田医師は、看護師に目配せし、用紙が白杜へと手渡された。
「ブライダルチェックの検査結果ですが、お二人とも、異常なしですよ」
「本当ですか?」
「はい。お手元の検査結果の用紙をご覧頂くとお分かりになると思いますが、どの検査も正常値範囲内ですので、今後妊娠をご希望であれば、自然妊娠の可能性は十分あると思います」
「はぁ……」
長田医師の説明に、漸く安堵の溜息が漏れた。
「ただし、奥様……、茜さん」
「はい」
「1センチほどの子宮筋腫がありますので、今後は経過をよく見る必要がありますからね」
「それって……」
「1センチほどの大きさのままなら殆ど問題ないのですが、妊娠後に腫瘍が大きくなった場合は、流産や早産といった可能性が出てきますので注意が必要です」
「今のうちに手術しておいた方がいいですか?」