『Special Edition③』
初めてデートをした、横浜のあの隠れ家的レストランでクリスマスディナーをした二人。
みなとみらいの夜景を堪能しながら、自宅マンションへと向かう。
レストランで白杜からクリスマスプレゼントにと、ブルーダイヤのピアスをプレゼントされた茜は、無意識に指先が耳朶に触れている。
「着け心地悪いか?」
「違いますよ。仕事で揺れるタイプのピアスができないから、ついつい買わないようにしてたので、すっごく嬉しいんです」
「そうか、気に入って貰えたならよかった」
プレゼントされたピアスが、耳元で可愛く揺れる。
茜は自身のスマホのカメラ機能を立ち上げ、薄暗い車内なのにルンルンで揺れるピアスを何度も眺めていた。
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自宅に帰宅した二人。
白杜はリビングで会社からのメールを確認し始めた。
茜は浴槽の湯張りのボタンを押し、浴室に干しておいた洗濯物を取り込む。
そして、外出する前にこっそり入れておいたものを冷蔵庫から静かに取り出す。
「白杜さん」
「……ん?」
「これ、私からのクリスマスプレゼントです」
「……ありがとう」
視線を持ち上げた白杜は、茜が差し出す箱を受取った。
「随分重いな」
「……ウフフッ」
「開けていいか?」
「はい、勿論」
ラッピングしてある包装紙を解いた、次の瞬間。
「おおおっ!……フラーズのヴィンテージ!」
「はい」
「え、どこで手に入れたんだ?まさか、ロンドン?」
「はい、そのまさかです」
「うわぁ~~、マジかぁ……」
彼が好きなフラーズビールはイギリス発祥のビール。
ロンドン便のフライトの時に、蒸留所にまで足を運んで購入して来たもの。
こういう時に、客室乗務員になってよかったと思える瞬間だ。