『Special Edition③』

「千奈、遅くなってごめんねっ」
「ぜ~んぜん!ウヌ様愛でてたから、大丈夫♪」

 1カ月ぶりに千奈と少し遅めのランチをするために、いつものファミレスで合流。

 千奈は5年前から韓国のイケメン俳優にハマっていて、結婚する前は1人で韓国で開かれるファンミーティングや舞台にも足繁く通っていた。
 朔也さんと知り合ってからは表立って推し活はしていないけれど、未だに熱は冷めてないらしい。
 スマホで推し俳優の動画を観ていたようだ。

「朔くんいると、ウヌ様全然観れないんだもん」
「……秘蔵コレクションはどうしてるの?」
「実家に隠してある」
「まだ捨ててないんだ」
「捨てるわけないじゃんっ!あの子たちのために必死に働いてたのに」
「……そうだったね」

 あの子たち=サイン入りグッズや限定品や生写真などのことで、旅費も含めてお給料の半分以上を毎月つぎ込んでたもんね。
 そりゃあ、簡単に処分できないか。



 私も4カ月前に入籍した。
 結婚式はごく親しい友人と身内だけの小さなパーティー形式だったけれど、凄く素敵な挙式だった。

 キャビンアテンダントの仕事はまだ続けていて、今日も台湾からのフライト帰りでこうして千奈と合流している。

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