『Special Edition③』
*
3月下旬の土曜日。
桜の開花情報もテレビから漏れてくるような季節になり、窓から差し込む陽射しがだいぶ暖かくなった。
公休日の茜はぽかぽか陽気の中、リビングのソファでうたた寝をしている。
一通りの家事を終え、贅沢なひとときを満喫していた。
白杜は午前中に、どうしても外せない打ち合わせが入っていて、正午少し回って帰宅した。
すると、リビングで寝ている愛妻を目にし、思わず顔が綻ぶ。
ふんわりとした髪。
白い肌に映える、チェリーブロッサムのグロス。
長い睫毛。
ついつい見惚れてしまう、美しい妻に。
暫し愛でた白杜は、足音を立てないように静かに隣りの部屋へと。
再び戻って来た白杜は、気持ちよさそうに寝ている茜をスケッチブックに描き始めた。
*
「んっ……え、いつ帰って来たんですか?起こしてくれればいいのに」
「気持ちよさそうに寝てたから」
「だとしても……」
リビングテーブルを挟んだ向かい側に腰を下ろしている白杜を目にして、茜は苦笑する。
「また描いてたんですか?」
「ん」
白杜は画材メーカー『芦田』の社長として、財団法人『アシダ』の代表として仕事をするようになって、自由に絵を描く時間が極端に減った。
教職に就いていた時は毎日のように放課後に描いたり、休日も自宅で絵を描くことが多かったが、今は休みを確保するのも難しいほどだ。
「わぁぁ~、がっつり寝顔じゃないですか~~っ」
「可愛い寝顔だったからつい描きたくなって」
「誰にも見せないで下さいね?」
「見せるわけないだろ……(こんな可愛い顔を)」
茜がひょいっと白杜の手元を覗き込むと、水彩画で書かれた自分の寝顔だった。
3月下旬の土曜日。
桜の開花情報もテレビから漏れてくるような季節になり、窓から差し込む陽射しがだいぶ暖かくなった。
公休日の茜はぽかぽか陽気の中、リビングのソファでうたた寝をしている。
一通りの家事を終え、贅沢なひとときを満喫していた。
白杜は午前中に、どうしても外せない打ち合わせが入っていて、正午少し回って帰宅した。
すると、リビングで寝ている愛妻を目にし、思わず顔が綻ぶ。
ふんわりとした髪。
白い肌に映える、チェリーブロッサムのグロス。
長い睫毛。
ついつい見惚れてしまう、美しい妻に。
暫し愛でた白杜は、足音を立てないように静かに隣りの部屋へと。
再び戻って来た白杜は、気持ちよさそうに寝ている茜をスケッチブックに描き始めた。
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「んっ……え、いつ帰って来たんですか?起こしてくれればいいのに」
「気持ちよさそうに寝てたから」
「だとしても……」
リビングテーブルを挟んだ向かい側に腰を下ろしている白杜を目にして、茜は苦笑する。
「また描いてたんですか?」
「ん」
白杜は画材メーカー『芦田』の社長として、財団法人『アシダ』の代表として仕事をするようになって、自由に絵を描く時間が極端に減った。
教職に就いていた時は毎日のように放課後に描いたり、休日も自宅で絵を描くことが多かったが、今は休みを確保するのも難しいほどだ。
「わぁぁ~、がっつり寝顔じゃないですか~~っ」
「可愛い寝顔だったからつい描きたくなって」
「誰にも見せないで下さいね?」
「見せるわけないだろ……(こんな可愛い顔を)」
茜がひょいっと白杜の手元を覗き込むと、水彩画で書かれた自分の寝顔だった。