『Special Edition③』

 大きな欠伸をしながら、キッチンでスープカレーを温めている茜。
 そんな彼女を見て、白杜は急に不安に襲われた。

「調子悪いのか?」
「え?」
「やけに眠そうだから、薬の副作用かと思って」
「……いえ。術後の薬は1週間分しか処方されてないので、もう飲んでませんけど」
「じゃあ、どこか痛みがあるとかではないんだな?」
「……はい」
「ならいい」

 立ち仕事が基本の客室常務員だから、一応念の為にと1週間の休暇を貰い、子宮鏡下手術は無事に終わった。
 それが1月上旬。

 あれから2カ月弱が経ち、完全に安心しきっていた白杜は、再発したのでは?と不安に駆られていたのだ。

「白米にします?それともパンにします?」
「うーん、パンにしとこうかな」
「じゃあ、フランスパンをカットしますね」

 昼食はあまりがっつり食べない派の白杜。
 自分の好みに合わせてくれている茜を横目でみながら、珈琲を淹れていると。

「珈琲豆、変えました?」
「……いや、いつものだけど」
「そうなんですか?なんか、匂いが変わった気がして」
「やっぱり調子が悪いんじゃないか?熱は?」

 白杜の手がスッと茜の額に伸びて来た。
 少しひんやりしている指先が肌に触れ、茜はじっと静止する。

「熱はなさそうだな」
「喉が痛いとか、咳が出るとかは?季節の変わり目だし、先週は国際線が3便入ってたから疲れてるんじゃないのか?」
「……痛みや咳はないですけど、昨日からずっと眠くて。陽気のせいだと思いますけど」

 白杜がサラダと珈琲をダイニングに運び、茜がスープカレーとパンを用意した。

「一応、念の為に聞くけど……、今月、アレ来たか?」
「へ?……そう言われてみれば……」
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