『Special Edition③』

 茜はスマホのアプリを立ち上げる。
 女性特有のホルモンバランスが数値で分かるように基礎体温や月経などが管理できるアプリ。
 ASJのCAの子たちが結構活用していて、数年前から茜も愛用している。

「来てませんね。先々月の頭に手術したから、暫くないものだと思ってましたけど」
「でも、行為自体は2週間控えるだけでいいって言ってただろ」
「……言ってましたね」
「だとすると、来てもおかしくないだろ……いや、来なくてもおかしくないか?」
「……え?」

 ダイニングテーブルに着いたはいいが、お互いに頭に『?』が浮かび、暫しお互いの顔を見合わせた。

「とりあえず、冷めるから食べるか」
「……そうですね」
「で、食べ終わったら下のドラッグストアに行くぞ」
「……はい」

 白杜が何が言いたいのか分かるだけに、茜は急にドキドキと緊張して来た。

 いつかは……とは思っていたけれど、こういうタイミングで意識するものなんだと、改めて結婚した意味を実感した。



「他に何か買うものは?」
「じゃあ、キッチンペーパーとアルミホイル買ってもいいですか?」
「ん」

 マンションのすぐ隣りにあるビルの1階にドラッグストアが入っていて、二人はそこを訪れた。
 白杜が手にしている店内カゴにキッチンペーパーとアルミホイル。
 それと、手のひらサイズの箱が入れられた。



 舞い戻るように自宅に帰宅した二人。
 お互いに顔を見合わせ、大きく深呼吸。

「行ってきます」
「ん」

 白杜は茜を送り出し、残りの荷物をキッチンへと運ぶ。

 そして――――――、数分後。

 ガチャッとドアが閉まる音はしたものの、茜がリビングへと来る気配がなく。
 白杜は心配になり、彼女の元へと。

 白い筒状のものを握りしめ、ドアの前で蹲っている。

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