『Special Edition③』
10月中旬の放課後。
2学期の中間試験の結果が返却され、久しぶりに許嫁の小春と放課後デートする予定の俺は、親友の栗原 詠と楽しそうに話す小春を見つめ、話が終わるのを待っている。
「兄貴、例のブツですが、墨田区に僅かに残ってると朋から連絡が入りやした」
「そうか、シキテン張るように言っとけ」
「へい」
組員の朋宏(スキンヘッドがトレードマーク)から連絡があったと鉄二(通称:鉄)が耳打ちして来た。
「仁くん、お待たせ」
「おぅ」
栗原は小春に手を振って、隣りのクラスの子と一緒に帰って行った。
「どこ行くの?」
「どこか行きたいところは?」
「う~ん、バッセン?」
「そんなとこでいいのか?もっと違うとこでもいいんだぞ?」
「最近テスト勉強で行けてなかったから、久しぶりにスカッとしたい気分」
「……そっか。じゃあ、バッセン行って、いつものカフェでパフェコースな」
「やったぁ~!」
小春は嬉しそうにぴょんぴょんとジャンプした。
俺らは2年前に事故に遭い、小春は一時期記憶を失っていたが、今は記憶も戻って平穏に過ごしている。
俺と小春は親同士が仲がいいというのもあって、物心ついた時からこの関係。
組の連中の中で紅一点で小春は過ごして来た。
極道の世界では頂点に君臨している桐生組。
極道と言っても時代の流れと共に変化していて、桐生組は警視庁でも一目置かれている組織だ。