『Special Edition③』
 
 千奈は仕事(動物病院の受付事務)を寿退社し、完全に専業主婦をしている。
 本人はお小遣い欲しさに働きたいみたいだけれど、旦那様である朔也さんからのお許しが出ないらしい。

 千奈にベタ惚れだから、おねだりしたらお小遣いには困らなそうだけど、ウヌ様コレクションには費やせないかも。
 きっと何に使ったのか、チェックしそうだもの。

 そんなことを思いながら、タッチパネルで注文を入れていた茜の視界に、見慣れぬものが映り込んだ。

「珍しいね」
「ん?」
「千奈が野菜ジュース飲んでるの、初めて見たかも」

 普段は珈琲か炭酸ジュース派の千奈。
 鮮やかなオレンジ色は、ファミレスの定番、野菜ジュース。

「……あのね」
「ん?」

 手にしていたスマホをテーブルの上に置いた千奈は、ちょっと照れくさそうにしながら座り直した。

「赤ちゃんができたの」
「えっ?おめでとう!今何ケ月なの?」
「3ケ月」
「もうっ、何でもっと早く言ってくれなかったの?」
「つわりもなくて、生理不順だったから気づかなくて」
「じゃあ、何で分かったの?」
「それがさぁ、先週お姑さんと一緒にレディースドック受けたのよ。それでまさかの妊娠発覚で」
「レディースドック……、さすが、朔也さんママ」

 超絶溺愛体質の朔也さんのDNAはお姑さんから受け継いでいるらしい。
 千奈のことが可愛くて仕方ないらしくて、しょっちゅう食事やサロンに誘われるらしい。
 
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