『Special Edition③』
数日後。
「小春、仁さんと喧嘩でもしたの?」
「……してないよ?」
「なんか、今日はちょっと不機嫌オーラじゃない?」
「組で何か揉めてるのかなぁ……」
体育の授業が終わり、更衣室で着替えて来た小春と詠は、教室で何か考え込んでいるような仁を視界に捉えた。
「お、姐さん」
「鉄さん。仁くん、何か悩み事?」
「え?……あぁ、まぁ、そんなとこっすね」
「大丈夫なの?」
「大丈夫っすよ。別に組で問題が起きてるとかじゃないんで」
「……それならいいけど」
自動販売機で飲み物を買って来た鉄二は、小春と詠の横を通り過ぎ、仁の机にスポーツドリンクのペットボトルを置いた。
「兄貴」
「……ん?」
「姐さんが心配してるっすよ」
「ッ?!」
鉄の言葉に視線を持ち上げた仁。
心配そうな顔で寄って来た小春に笑顔を向ける。
「仁さん、物憂いな顔もイケメンだけど、小春が心配するからもうちょいにこっとお願いします」
「……悪い」
「悩み事があるなら、聞くよ?」
「……う~……ん~……」
小春の声掛けにも言い淀む仁。
鉄二と顔を見合わせ、観念したかのように溜息を漏らした。
「今日、時間あるか?」
「……うん、大丈夫だけど」
「じゃあ、俺に付き合え」
「……うん」
仁が何に悩んでいるのかは分からないが、とりあえず隠し事はされていない様子。
それに安堵した小春は、詠ににっこりと笑みを返した。
――――その日の放課後。
西門前に横付けされた桐生組の車に乗り、小春と仁と鉄二と詠は、とある場所へと向かった。