『Special Edition③』
「到着しやした」
「降りるぞ」
桐生組のワンボックスカーが到着したのは墨田区にある、何の変哲もないどこにでもあるような遊技場。
小春は車を降りて、詠と仁たちの後を追う。
「小春はここ、来たことがあるの?」
「……ないと思う」
「そうなの?」
「ん」
よく行くバッティングセンターにもゲーム機や自販機などはある。
桐生組が経営している建設会社のすぐ傍に、カラオケボックスとゲームセンターが一体化している建物がある。
そこに組員のみんなとよく行くから、ゲームセンター自体は結構頻繁に行く方だけれど。
さすがに自宅から距離のある墨田区にまでゲームをしに来たことはない。
仁くんと鉄さんが足を止めたのは、施設の左奥にあるUFOキャッチャーの機械の前。
そして、大柄な二人が顔を見合わせ、そっと道を開けるようにした、その先に!!
「えっ……キャァアアァァァ~~ッッッ!!」
「ピーちゃんだぁ!!」
少し前に小春がハマったゲームのキャラクター、子豚のピー。
ゲーム自体はあまり流行らず、一時グッズが市場に出回ったりしたが、それもすぐに流行のものに呑まれて。
小春が、市場に出回っていると気付いた時には既に遅し。
仁のおかげで幾つかのグッズを集めることができたが、それも数か月経ち、もう諦めていた所。
そんな中、たまたま休みの日に朋宏が立ち寄った遊技場のUFOキャッチャーにピーがあるのを見つけ、鉄二に連絡をしたのだった。
「詠ちゃん、見てみて!赤ちゃんのピーちゃんだよ~~!これ超激レアなやつ!」
「小春、テンション高っ」