『Special Edition③』
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「お母さん、何だって?」
「娘を宜しくお願いします、だって」
「へぇ~、邪魔者がいなくて、今夜はイチャラブだろうな」
「あ?」
「この間、夜中に急にお腹が痛くなって起こしに行ったら、パパに腕枕されて気持ちよさそうに寝てたから」
「……夫婦なんだから、別におかしくないだろ」
「年頃の娘がいるんだから、もう少し気を遣ってくれたって」
「無茶言うなよ。寝てる時まで気を張ってろって?」
「……ぅっ」

 小春がお風呂に入っている間に着替えを届けに来てくれた母親。
 挨拶だけして早々に帰ったらしい。

「毎日夫婦喧嘩して家庭内の空気が悪いよりはいいだろ」
「それはそうだけど」
「小春には俺がいるんだから、甘えたいなら俺にしろよ」
「っ……」
「腕枕だろうが、膝枕だろうが、好きなだけしてやるから、な?」

 ポンポンと頭が撫でられる。
 そうだよね。
 そろそろ親離れする時期だよね。

 婚約したってことは、高校を卒業したら私は仁くんの奥さんになるわけで。
 今までは『家族』=『両親』だったけれど、これからは仁くんと仁くんの家族が私の家族になる。
 もちろん、自分の両親と縁を切るわけじゃないから、この先も両親は家族だけれど。
 きっと、優先順位が変わるのだろうな。

「仁くんは、パパさんとママさんがラブラブしてたら、どう思うの?」
「親父たちが?」
「うん。仁くんちだって、結構仲いいじゃない」
「……考えたくもねーな」
「フッ」

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