『Special Edition③』

 常に組の人がお屋敷の中にいるから、うちの両親と違ってラブラブな感じではないけれど。
 それでも、パパさんはママさんを大事にしているのが分かるし、ママさんはパパさん一筋なのが伝わってくる。

 だって、周りに沢山の男の人がいるのに、ママさんがパパさんを見る目は、いつでも少女のようにウキウキしてる感じがするもの。

「俺は何歳になっても、小春といちゃいちゃしたいからな?」
「っ……」
「子供が生まれようが、頭(組長)になろうが」

 離れの来客用の部屋に敷かれたお布団の上に胡坐を掻いている彼は、右手をスッと私へと差し伸べる。
 その手に引かれるように彼の胡坐の上にちょこんと座ると、お風呂上がりのソープの香りがふわっと鼻腔を掠めた。

 仁くんの家には子供の頃からもう何百回とお泊りしてるけど、やっぱり結納を交わしてからは、ちょっと気分的に違う。

 幼馴染という関係ではなく、将来を誓い合った男女みたな空気がどことなく漂っていて。
 それじゃなくても、彼から駄々洩れてくるフェロモンは本当に毒だから。
 お屋敷の中に沢山の組員さんがいるのが分かってるのに、ちゅーだけじゃ止まれなかったらどうしようとか、無意識に考えちゃう。

「それは、拒否ってんの?」
「ふぇっ……?」

 仁くんを意識しすぎて、気づいたら自分の口を両手で覆っていた。

 熱い視線が注がれる。
 無駄に色気があり過ぎるんだってばっ。

「んっ……」

 口元を覆う両手が彼の手によって剥がされ、背中に軽い衝撃を受けた。

 本当に、彼の前では俎板の鯉だ。
 
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