『Special Edition③』
***

「あぁ~~っ、もう18時になちゃうぅぅ~~」

 小春は、仁が所有しているマンションで、仁のためにケーキを作っている。
 学校から直行でマンションに送り届けて貰い(桐生組の車で)、ここ半月ほど毎日のように練習した成果を発揮するために。

 料理は結構得意な小春だが、唯一苦手なのが、デコレーション。
 土台部分のスポンジケーは完璧に焼けても、いざホイップした生クリームを塗ろうとすると上手くいかない。
 詠にレクチャーして貰ったり、プロのパティシエの簡単デコレーション術という動画を観たりして何度もトライしたが、センスがないのか、歪なケーキに仕上がってしまうのだ。
 だから、半月かけて毎日練習し、今夜がいよいよ本番なのだ。

 だって今日は、仁くんの誕生日だから。

 本当は夕ご飯も作ってあげたいところだけど、小春にそんな余裕はない。
 オーブンで焼いている時間にパパっと作ればいいのかもしれないが、緊張してそれどころではない。

 
 焼き上がったケーキの粗熱を取り、その後に冷蔵庫で少し冷やす。
 そうすることで半分にスライスしやすくなるからだ。
 20分後。

「フゥ~~、よし!」

 気合を入れ直した小春はスポンジケーキを半分にスライスし、回転台にケーキ用の大皿を乗せ、その上に下段のスポンジケーキを乗せる。
 泡立てた生クリームをパレットナイフで均等に塗り、カットしておいた苺を下の生地に乗せ、再びクリームを乗せる。

 上の生地も乗せ、周りを覆うように薄くクリームを重ねて……。
 甘いのが苦手な仁くんでも食べれるように、甘さ控えめのクリームにしてあるのだ。
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