『Special Edition③』
スカイレンジャーは地球の平和を守る戦隊モノで、忍の一番のお気に入りの番組。
録画しておいたものを毎日のように繰り返し観ているのだ。
峻は忘れ物がないか、今一度確認し、つぐみを起こしに行く。
「つぐみ、……つぐみ」
「……んっ」
長い黒髪がさらりと流れ、羽毛布団に包まっていたつぐみの顔がひょっこりと現れる。
「今何時?」
「6時半になるところ」
「……えっ?!」
ガバッと布団を剥いだつぐみは、物凄い勢いで壁掛け時計に視線を向ける。
「やだっ、ホント!ごめん、すぐ朝ご飯の用意するね。アラームいつの間に止めたんだろう」
「朝メシはさっき買って来たから」
「へ?」
「それに、アラームは鳴ってないよ」
「……え?」
「俺が止めたから」
「……?」
「とりあえず、珈琲淹れるから起きておいで」
チュッとおでこにキスを落とし、峻は寝室を後にした。
そして、リビングにいる忍にそっと耳打ちをする。
「忍隊員、姫様のお目覚めだ。いよいよ、練習した成果を発揮する時だぞ」
「よーしっ、がんばるぞぉ~~」
父子で仲良くキッチンへと向かう。
峻はエスプレッソマシンで珈琲を淹れる。
忍はパントリーからミニ脚立を取り出し、キッチン台の前にスタンバイする。
出来上がったエスプレッソにフォームミルクを注ぐ。
それに爪楊枝を使って、忍がネコの顔を描く。
「忍っ、もう起きてるの?」
「あさごはんもたべおわってるよ~~」
「えっ?!」
パジャマの上にウールのロングカーディガンを羽織ったつぐみは、キッチンに立つ忍を見て驚いた。