『Special Edition③』
白杜さんがすぐさまスマホで検索し始めた。
「結婚してまだ4カ月ですし、私はまだすぐに欲しいとか考えてませんよ?仕事もありますし……」
「いや、そうも言ってられないだろ」
「え?」
「俺、アラフォーだし」
「……」
「茜はよくても、俺が原因なら、1日も早く茜のご両親に説明しないと」
白杜さんはまだ『先生』が抜け切っていない。
教え子を妻にしたこともあって、何かにつけて『茜の両親』という言葉を口にする。
「子供が欲しくて結婚したわけじゃないですよ。白杜さんとこの先もずっと一緒にいたいから結婚したので……」
「籍を入れる理由はそれであったとしても、現実と理想は違うから」
「……」
もうっ、こういう頑固なところは根っからの生真面目気質だよね。
生徒との間に、揺るぎない一線を引き続けた人だもの。
今あれこれ言っても聞く耳持たなそう。
「おっ、いけそうだな」
彼の手元を覗き込むと、本当に健康診断が受けられる病院を検索していた。
「ブライダルチェックって、結婚前だけとは限らないって書いてある」
「そうなんですか?」
「妊娠や出産の妨げに関わる病気がないかを調べることができる検査で、体のトータルチェックだって」
大企業の社長だから、こういう行動力は本当にずば抜けている。
普通の人なら会社の健康診断でさえ、後ろ向きなのに。
「茜は会社で定期的に身体検査を受けてるだろ。それに婦人科の検査項目がプラスされたと思えばいい」
「白杜さんは?」
「俺はこの際だから、ガッツリ受けておくかな」
ガッツリ……。
まぁ、こういうことに後ろ向きで話し合う機会すら無いよりはいいか。