記憶をなくした海
「佐々木さん。俺、どうしたのかな?」

「くも膜下出血で倒れて、搬送されたの。何日も意識がなかったけど、やっと目覚めてくれて…」

涙声で答える。

「そっか。俺が倒れたのって、佐々木さんと居る時のこと?」

「ええ…」

「もしかして、救急車呼んでくれたのも佐々木さん?」

それは嘘ではないので、私は黙って頷いた。

すると、

「そうなんだ…ありがとう。俺のために、嬉しいよ」

何故か、とても穏やかな笑みで諒は呟くので、何かが変な気がした。


「自分のお名前、言えますか?」

ドクターが尋ねる。

「湯川諒です」

「では、湯川さん。いま、おいくつですか?」

その質問に、

「18です」

当たり前のように諒は答え、私は困惑した。

私も諒も、現在22歳である。
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