記憶をなくした海
諒のほうは、特に誰か女と会うとも言っていなかったので、多分まだこれからなのかもしれない。

実際、浮気してみたあと、やはり同じような気持ちになるのだろうか。

変な話が、他の誰かとのセックスが、別に大したことではないとお互いに知ってしまえば、結婚後はずっと互いだけを見つめていられる気がする。

明日は日曜なので、私はそのまま諒の部屋を訪ねた。

「いらっしゃい」

「こんばんは」

そう言って、いつものようにハグをした。

やはり、私にはこの人しかいない…改めてそう思う。

しかし、諒は、

「寧々…いつもは香水なんかつけてないよな?しかも、メンズの香水みたいな匂いがする」

そう尋ねるので、

「やだ、なかなか鋭いじゃない」

勘がいいものだと感心して笑いながら、

「遊んでる男って、何故か香水つけてることが多いわよね。その移り香がまだ残ってたのかな?」
< 7 / 22 >

この作品をシェア

pagetop