あなたの居る未来が欲しかった
「そりゃそうよ!もし好きな人が居なくたって、見合いなんて冗談じゃないし、ましてや、ずっと忘れられない人が居るのに、どうして知らない人なんかと結婚しないといけないの…」

言うだけ言って、俯いてしまう私。

「忘れられない人って、自惚れみたいだけど…もしかして俺のこと?」

「当たり前じゃない!他に誰が居るというの?」

そう言い切ると、戸倉は真剣な眼差しで私を見つめ、

「じゃあ、今度こそ俺と駆け落ちする?」

思いがけない言葉に、何も言えなくなってしまう。

「あ…駆け落ちとは言わないか。俺は仕事の関係で、この近くの独身寮に住んでるから、最初はこっそり匿うことにして…。早く籍を入れて家族寮に移れば、もう見合い結婚なんてさせられないじゃん。俺と結婚してしまえば…」

「戸倉、無理してるんでしょう?6年前、私の無茶に付き合おうとして、そんな酷い目にあったのに…」
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