あなたの居る未来が欲しかった
運命めいた再会後まもなく、私は緒方紫から戸倉紫になり、早くも2年が経った。

彼と再会する前は、好きでもない外科医を婿養子として迎えなければいけないのかと、自分の人生を半ば諦めていた。

故に、自分の苗字が最愛の人と同じになったことを不思議に感じつつも、穏やかで幸せな日々を送っている。 

大学卒業後の私は、家に閉じ込められていたも同然なので、仕事のスキルがゼロだった。

夫の隆は、無理して働かなくてもいいと言ってくれたが、そこまで甘えるわけにはいかない。

とはいえ、出身大学がそこそこ有名なところでも、当時24歳で職歴が一切なければ、就職は難しかった。

なので、最初は、この温泉街にある有名ホテルの売店のバイトから始めた。 

海外からのお客様相手に、幾つかの外国語で接客をしていたことが、どうやら好評だったようだ。
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